「棚卸の立会ってうちにも必要?」「監査対応って、どんな企業が対象になるの?」
こうした疑問は、製造業や卸売業、EC業など、在庫を抱える企業で年に一度は必ずと言っていいほど出てくるテーマです。
特に、年商が10億円を超えると、規模の拡大に伴って監査対応が求められるケースが増えます。たとえば、IPO準備や親会社の連結対象になることで、会計監査の対象となる場合もあり、その際には在庫の実地確認や管理体制が厳しく問われるようになります。
本コラムでは、「棚卸の監査対応」に焦点を当て、どんな企業が対象になり、どのような準備や体制が求められるのかをわかりやすく解説します。これから外部監査が導入される企業、または在庫管理の信頼性向上を目指す企業のご参考になれば幸いです。
目次
監査法人はなぜ「棚卸」に注目するのか?

財務諸表監査を行う監査法人にとって、「棚卸資産(在庫)」は貸借対照表(B/S)上の大きな資産の一つです。
特に製造業や卸売業の場合、棚卸資産の金額が会社の純資産に匹敵するほど大きくなることもあり、「在庫の過大計上」「架空在庫」などの不正リスクを抑えるため、実地棚卸の立会い(監査立会)が重要視されます。
この立会いは、「本当にその在庫がそこにあるのか」「在庫として正しくカウントされているか」を第三者が確認するプロセスです。企業が棚卸を実施するタイミングに合わせて、監査法人が現場に訪れ、実際の棚の在庫を一部抜き取りでチェックします。
棚卸の監査対応が「必要な企業」と「不要な企業」の違い
実地棚卸の立会いや棚卸監査への対応が必要かどうかは、主に以下の2つの観点で決まります。
1. 会計監査の対象企業かどうか
会社法や金融商品取引法のもと、以下のような企業は公認会計士または監査法人による会計監査が義務付けられています。
- 上場企業およびその子会社
- 大会社(資本金5億円以上 or 負債200億円以上)
- IPO(新規上場)準備企業
これらの企業は、財務諸表監査の一環として、棚卸資産の実地確認(立会監査)を受ける必要があります。
2. 銀行融資や資金調達に監査報告書が必要な企業
非上場企業でも、銀行や投資家からの信頼性確保のために任意で監査を受けている企業もあります。その場合も、監査法人が在庫の現物確認を求めるケースがあります。
棚卸監査の流れ
ここでは、監査法人による棚卸立会が行われる一般的な流れを紹介します。
- 棚卸日程の事前調整
- 監査法人と棚卸実施日をすり合わせます。期末(3月末、12月末など)に集中する傾向があります。
- 事前の棚卸手順確認・管理体制のレビュー
- 棚卸手順書、責任者の配置、使用ツール(棚卸表、ハンディ端末など)の確認。
- 当日の立会い
- 棚卸の現場に監査法人が訪問し、抜き取りや逆引きの方式で数量を確認。
- 例えば「棚卸表のNo.15の商品がここにあるか」「この棚にある商品が棚卸表に記載されているか」など。
- 棚卸差異の確認と原因分析
- 数量のズレがあった場合は、その理由と対応を説明する必要があります。
- 記録・証憑の整備
- 棚卸実施記録(誰が、いつ、何を数えたか)や棚卸表は、監査の証憑として保管が必要。
監査対応に強い棚卸体制とは?
棚卸監査の現場で混乱を防ぐためには、普段からの在庫管理体制と、棚卸手順の整備が重要です。
以下のような体制が望まれます。
- 棚卸を行う現場スタッフが、在庫管理のルールを理解している
- 入出庫の記録がリアルタイムに行われており、帳簿と現物が一致しやすい
- 棚卸表がシステムから即座に出力できる
- ハンディターミナルやスマートフォンによるバーコード読み取りで、人的ミスを減らす
- 監査法人が訪問しても、棚卸状況を即座に見せられるシステム(在庫一覧、差異一覧など)がある
棚卸監査対応と「在庫スイートクラウド」の親和性
弊社が提供する実在庫管理システム「在庫スイートクラウド」では、以下のような機能で棚卸監査への対応を強化できます。
- スマートフォンやハンディターミナルによる実地棚卸
→ バーコードやQRコードで素早く正確な棚卸が可能。記録の残存性も高い。 - 在庫差異の即時表示機能
→ 数量差異があればその場で確認し、原因分析がしやすい。 - 棚卸記録の保管とエクスポート
→ 誰がどこをいつ数えたかを記録に残し、CSV出力も可能。監査証憑に使えます。 - 監査法人立会時の現物照合の支援
→ モバイルでの在庫一覧検索、棚卸履歴の即時照会など、現場での対応がスムーズ。
おわりに
棚卸監査は、決して一部の大企業だけの話ではありません。成長企業や資金調達を視野に入れる企業にとって、「在庫の信頼性」は経営の信用力を大きく左右します。
だからこそ、日常的な在庫管理の精度を上げ、監査対応をスムーズにすることが、企業の競争力につながります。
「うちはまだ監査対象じゃないから関係ない」と思わず、まずは自社の棚卸手順や在庫管理の現状を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

監修者
後藤 員久 (ごとうかずひさ)
公認会計士
中和有限責任監査法人代表社員
経歴
中央新光監査法人国際部(現、PwCあらた有限責任監査法人)に入社し、その後、英和監査法人 (アーサーアンダーセン、現、あずさ監査法人)に転籍し、通算12年、会計監査に従事。金融 グループに所属し、グローバル企業のサポートを経験し、その後、株式公開グループに異動、 上場準備のための資本政策や経営管理体制構築のためのコンサルティングに従事。アーサーア ンダーセンを退社後、清友監査法人に入社し、代表社員として、株式上場準備中の中堅・新興 企業の監査、金融商品取引法監査、会社法監査、その他学校法人等の非営利法人に対する法定 監査に20年間従事。