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スマートフォン×バーコードを構築する3つの選択肢
製造業・修理業・工事業・卸売業・ECといった実在庫を扱う業界を中心に、スマートフォンとバーコード・QRコードを活用した在庫管理のニーズが拡大しています。現場から直接、PiPiと入出庫や棚卸を登録できる仕組みは、スピードと正確性の両立に直結するため、業務改善の観点からも注目されています。

このようなシステムを導入するにあたり、多くの企業が「どの方式で構築すべきか」で迷われます。一般的には、以下の3つの選択肢が存在します。
- 既成のパッケージ(クラウドSaaS)の導入
- ローコードツールを活用した自社構築
- ゼロから設計するフルスクラッチ開発
本稿では、それぞれの方式の特性・コスト・柔軟性・運用負荷・スマートフォン対応などの観点から、特徴を比較しながら解説します。
なお、パッケージ型の有力な選択肢として、2,000拠点以上の導入実績を持つクラウド在庫管理システム「在庫スイートクラウド」も併せてご紹介します。
1. パッケージ導入(クラウド型SaaS)
パッケージ型の在庫管理システムは、既に業務に必要な機能が備わっており、導入してすぐに使い始めることができるのが最大の利点です。
特徴
- 導入スピードが早い:環境構築・初期設定のみで短期間に立ち上げ可能
- 月額利用料でコストを平準化:初期投資を抑えつつ、必要な機能を安定的に利用可能
- スマホアプリやバーコード対応が標準搭載されている製品も多い
- スマホOSのアップデートにも自動対応:ベンダー側がメンテナンスを実施
「在庫スイートクラウド」では、バーコード・QRコードを活用した実在庫管理を標準機能として提供。スマートフォン(iOS/Android)やハンディターミナルからの入出庫登録に対応しており、現場からのリアルタイムな在庫反映が可能です。
デメリット
- 自社業務への完全なフィットは難しいことがある
- 業務のやり方をパッケージに合わせる必要があるケースも(Fit to Standardの考えも必要)
ただし、システム内で設定を変えると動作が変わるといった、ある程度の柔軟性は用意されています。選定の際に、ベンダーに確認しながらどこまで出来るのか?それで自社の改善業務が対応できるのか? を検討するアプローチとなります。
2. ローコード開発
ローコードツールを使った開発は、フルスクラッチほどの自由度はないものの、パッケージより柔軟に自社の業務に合わせたシステムを自分達で構築できる中間的なアプローチです。 自分達の業務を、提供されている機能の範囲でITエンジニアじゃなくても作れます。
特に「ITエンジニアじゃなくても作れる」点がローコード開発ツールの売りです。kintoneも「文系管理職でもシュシュっとできちゃう」といったCMをやっていましたね。専門のエンジニアじゃなくてもできる簡単なツールですよ、というのが売りのひとつとなっています。
特徴
- 業務に合わせた柔軟なアプリ作成が可能
- ITエンジニアでなくても構築・改善ができる
- モバイル対応も容易
デメリット
- 月額利用料が高額になることもある(ユーザー数、リクエスト数などで上限)
- APIリクエスト数、ストレージ容量、ユーザー数などに上限がある
- バーコード周辺の機能は制限が多く、本格運用には工夫が必要
ユーザー数やリクエスト数やストレージ容量など、それぞれのサービスで価格設定があります。自分達で思ったような在庫管理を行うと、いくらになるのかを算出し確認する必要があります。
また、スマートフォン活用においては、一部のローコードツールがバーコード読み取りやラベル発行に対応していますが、業務現場での本格的な入出庫管理や棚卸には限界がある場合もあります。 やりたいことが出来るのか?制約はないのか?要注意ポイントとなります。
3. フルスクラッチ開発(完全自社開発)
ゼロから開発する場合、最も柔軟に設計でき、自社業務にピタリと合わせた理想的なシステムが構築可能です。
特徴
- 業務に完全フィット
- すべての仕様・連携・画面が自由設計可能
デメリット
- 開発・運用コストが非常に高い
- 開発リスクが高い(開発プロジェクトの破綻、長期化に伴うコストアップ)
- スマートフォン対応の保守負担が非常に重い(毎年のOSアップデート(iOS・Android)による不具合や動作確認の負担)
- 将来的な改修や機能追加にもエンジニアの継続的確保が必要
スマートフォンを導入する最大のメリットは、高価な専用ハードウェアを別途購入する必要がない点です。これにより、導入コストを大幅に削減できます。
しかし、課題も存在します。スマホのOSは毎年アップデートされるため、社内におけるシステムの将来的な技術継続性を確保するのが難しくなるという側面もあります。
スマートフォンを活用する在庫管理の現実
- OSアップデートが毎年あり(iOS/Android)、アプリが正常に動かなくなるリスクがある
- バーコード読み取りやラベル印刷が求められる
- 端末種別やカメラ性能によるバラつきも考慮
こうした要素に、開発・保守体制でどう対応していくかは、システム選定の大きな判断材料です。
比較まとめ表
| 比較項目 | パッケージ導入 | ローコード開発 | フルスクラッチ開発 |
| 初期費用 | ◎ 少ない | ○ 中程度 | △ 高額 |
| 月額費用 | ○ 平準化 | △ 高額な場合も | ○ 維持費次第 |
| 導入スピード | ◎ すぐに使える | ○ 数週間〜数ヶ月 | △ 数ヶ月〜1年以上 |
| 業務への適合性 | ○ 標準機能+連携対応 | ○ 比較的柔軟 | ◎ フル対応 |
| スマホ対応 | ◎ 専用アプリ・OS対応済 | ○ 一部対応 | △ 自社対応必要 |
| バーコード活用 | ◎ 標準装備・高速読み取り | △ 制限あり | ◎ 自由に設計可能 |
| 保守体制負担 | ◎ ベンダー任せ | ○ 一部任せ | △ 自社体制必要 |
まとめ
在庫管理のクラウド化・スマホ対応を進めるにあたり、選択肢は多く存在しますが、それぞれに明確なトレードオフがあります。
- スピード重視・現場導入を早く進めたい場合は、 パッケージ型クラウドサービスが有力です。
- 業務にある程度の個別対応が必要だが、フルスクラッチのリスクは避けたい場合は、ローコード開発も選択肢になります。ローコード開発とはいえ、仕様をまとめ開発を進めるための社内のIT推進力は必要となります 。
- 業務プロセスが非常に特殊だったり、細かい部分でのこだわりがあり、既存ツールでは対応できない場合は、フルスクラッチが必要になります。初期コストがかかる上に、スマホアプリの開発・保守、OS対応といった技術面での負担が大きいため、長期的な運用体制を見据えた判断が求められます。
ローコードやフルスクラッチ開発は柔軟性がある一方、完成保証がなく、 「思った通りに完成しない」「聞いていた通りにスケジュールが 進んでいない」「思いのほかコストがかかってしまった」といった開発リスクを常に伴います。 単なるコストや機能の比較だけでなく、「確実に動く」「継続できる」という視点での選定も重要です。
当社はクラウド/SaaSの 在庫スイートクラウドPro を提供しております。 スマートフォン+バーコードを使って在庫管理していきたいと検討されている方はご相談ください。