在庫管理・倉庫管理(WMS)のお役立ちノウハウまとめ
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在庫管理ノウハウ集

手書きで在庫管理している人が効率化のために最初に実践するべきこと

システム基礎知識

在庫の管理を、手書きで行っている皆さん。
手書きでは手間もかかりますしミスも起こりがち。
そんな状況から早く抜け出したいものです。
バーコードを活用し在庫管理を強化した例は数多くあります。

しかし「システム導入」ありきで改善プロジェクトを進めるのは危険。
「投資する意味があるのか」「一緒にこれもやりたい」といった意見が出て迷走。
あせる担当者は「システム導入」が手段でなく目的になってしまう。
こんな話をよく耳にします。

重要なのがスタート段階での「合意形成」。
最初に、関係者間でクリアすべき課題を共有することが大切です。

ここまで読んで
「人を巻き込むのは苦手で・・・」
と尻込みしていませんか?

なにも声高に主張する必要はありません。
ポイントは「現状をシンプルにまとめ、数値化する」こと。
ここに集中しましょう。

今日は、とある会社の改善プロジェクトをストーリー仕立てで紹介します。
慣れない若手スタッフが合意形成に向け、手書きでの在庫管理の課題を数値化していく様子をご覧いただけます。
きっと、御社の改善に向けたヒントが見つかることでしょう。

手書きで在庫管理している様子

プロローグ

篠原樹脂工業株式会社は、神奈川県にある社員数100名規模の自動車・バイク向け樹脂部品メーカーです。
基幹システムで在庫管理をしていますが、年度末に行う実地棚卸では帳簿在庫(基幹システムの在庫データ)と実在庫に大きなズレが生じていました。

ある年、300万円近いズレが生じ赤字転落になるかとヒヤリ。
篠原社長(64才)は、正確な在庫把握に向けた対策を命じたのです。
それを受け、入出庫や保管を担当する管理部ロジスティクス課では、5年前より在庫の棚札管理も行うようになりました。

棚札管理とは、現品のそばに該当アイテムの棚札(在庫台帳・在庫管理表と呼ばれる)を置き、入出庫を行う際に「いつ」「だれが」「幾つ」「入庫or出庫」し「在庫がいくつになった」かを記入して在庫の現品数と履歴を記録します。
現品のそばに棚札があれば、在庫がずれた時にも気づきやすく、原因も追跡しやすいと期待をこめてのスタートでした。

帳票でどこに何がいくつあるのか管理する倉庫

砂田さんの問題提起

棚札が導入された頃は新人だった砂田さん(27才)も、今では主任。
自発的に改善案を提案すべきポジションとなっています。

棚札についても当初は言われるままに作業をしていましたが、最近では疑問を感じていました。
そこで棚札の問題点をまとめ、定例の部門会議で自分なりの意見を述べることにしたのです。

「手間なので、書き間違えや計算間違えが多い。」
「棚札が見当たらないと、いつも大騒ぎしている」
「置ききれず場所が分かれた時も管理しづらい」

分かりやすいようプロジェクターに棚札のサンプルも写し出しています。
これも事前に思いつき、昨日から準備したおいたものです。

記入された棚札のイメージ

意見を聞きながら、盛んにうなづく部門長の三上課長(47才)。
準備した甲斐があったと気をよくした砂田さんが最後に言いました。

「非常にアナログなやり方だと思います。
システム化は考えていないのでしょうか?」

意見を聞き終わった三上課長。
少し間があった後に口にした内容は、砂田さんにとって意外なものでした。

「もっと数字にできない?」

三上課長が指摘したのは、砂田さんの意見が
「手間だ」
「間違えが多い」
「いつも」
「管理しづらい」
「非常にアナログなやり方」
と具体性に欠けており、このままでは他部署や経営層には理解されにくいという点でした。

ただし着眼点は良いので、棚札管理の問題点をできるだけ数値化するよう砂田さんに宿題が出されたのです。
予想外な展開に「余計なこと言ったかな」と少し後悔する砂田さんでした。

同僚への相談

「そろそろ宿題やらないとなぁ・・・」
こうすれば良いかなとアイディアは浮かぶのですが、日常業務が忙しくなり宿題が進んでいない砂田さん。

そんなある日、年齢が同じで設計部門の東(あずま)さんと仕事帰りに飲みにいくことになりました。

レモンサワーを飲みながら、自然と宿題の話をする砂田さん。
東さんにも
「それじゃあ分からないよ」
と言われる始末です。

居酒屋にて同期に相談

少し言い過ぎたかなと思った東さんは疑問点を確認することにしました。

「砂田さん、手間ってどれぐらいなの?」
「記入する内容は、日付と入出庫数と繰越在庫数と名前の4つ。
在庫数は計算ミスも多いんだよね。」

「今の話しは、記入時間と計算ミスの2つの話しをしてるね。
記入時間は、1回あたりの時間×件数で出せない?」
「1回10秒として1日70回ぐらいかな。
合計700秒だから、え~と11.67分か。
1ヶ月20日として233分だから、ざっと4時間」

「費用に換算すると?」
「時給2,000円だとして1ヶ月8,000円か。。。」

具体的な数値を見て、提案に自信が無くなってきた砂田さん。
そんな砂田さんに対し、東さんは淡々と話を進めます。

「計算ミスのほうはどれぐらい発生してるの?」
「それなりに多いはずだけど、ミスしてもすぐに判明しないから
はっきり分かっていないんだよ。
前の人の計算が合っているか確認してたら作業が遅くなるし、そんな時間ないよ」
「期間を限定してでも、しっかり調べたら分かるんじゃない?」
「それもそうだな」

東さんと会話をすることで、やるべきことが少しクリアになった砂田さん。
翌日には三上課長に1ヶ月限定で仕事終わりにすべての棚札をチェックする許可を貰いました。

期間限定のデータ収集

1,000枚近くある棚札を毎日チェックするのはさすがに大変。
許可を得て、若手の坂口さん(21才)と手分けしつつ、当日入出庫のあったアイテムの棚札だけを確認することにしました。
こうして発覚した棚札管理のミスですが、計算ミス以外にも、数字の読み間違え(1と7など)や保管場所が分かれたことによる記入モレもあったのです。
手書きなので数字を認識違いする

今回の調査で、内容別でのミスの件数がはじめて確認できました。
当初は黙々と作業していた坂口さんですが、集計結果が出ると
「ミスの内容と件数が分かっただけでも収穫ですよね」
と嬉しそうです。

一方、作業量の洗い出しはヒアリングが中心となりました。
棚札管理は棚札への記入だけではありません。
棚札の準備や回収、棚札の集計、EXCEL在庫表への打ち込み。
こうした作業があってようやく、基幹システムとの在庫の照合ができるのです。

一連の作業を主に行っているのはアシスタント。
砂田さんはアシスタントリーダーの濱口あゆみさん(32才)に聞き取りを行うことにしました。
作業をひとつずつ聞き出しつつ、ノートに流れを書きだします。

棚札管理の業務フロー

「改めて見ると、あゆみさん達の作業量多いですね」
「月末・月初に集中するから、いつも帰りが遅くなるの」

作業ごとの工数を聞き出す砂田さん。
確認すると、記入以外の工数のほうが多いことは明らかです。

更にヒアリングを続けます。
「やっぱり、在庫表の打ち込みが一番大変ですか?」
「それもそうだけど、棚札の追跡も頼まれたら時間かかるわ」
「回収した棚札はファイルしてますよね?」
「月単位でファイルしているから、色んなファイルを見なきゃ履歴を追えないの」
「追跡にかかっている時間も集計したいんですが、期間を限定したらできます?」
「期間限定なら、大丈夫だと思うよ」

東さんから教わった「期間限定」を使いつつ、作業時間の数値化を進めていく砂田さんでした。

ドキドキの集計発表

集めた情報を取りまとめる砂田さん。
レポート作りにも力が入ります。
作成のコツをネットで調べると「紙1枚にまとめよう」というキーワードを発見。
挑戦することにしました。

事前にレポートを配り、いよいよ部門会議です。
緊張しながら、レポート内容を発表する砂田さん。

棚札管理に関するレポート

「・・・。以上、棚札管理の状況と課題についての報告を終わります。」

砂田さんの発表が終わると、課のメンバーから
「分かりやすかった」
とお褒めの言葉が出たあと、議論はすぐ「課題をどう対処すべきか?」に移ります。
「もっと褒めてよ。。。」
と思いつつ、部門内では課題の共有ができたのを感じた砂田さんでした。

しばらくすると、部門内の意見はおおよそまとまりました。

在庫ずれの発覚はデータ照合でないと難しいが、棚札だとせいぜい月次での照合しかできない。
システム化すれば、同じアイテムが複数の棚に保管されても自動集計されるので毎日データ照合できる。
配布、回収、EXCEL入力、紙の履歴追跡が無くなり効率化も進む。

ちょうど時間となり、三上課長が会議を閉めます。

「これなら、社長にも課題については理解してもらえるだろう。
ただ、システム導入となると費用が絡む。
概算でも見積もりを取ってから会社に話を持っていこう。
私がやるが、砂田さんも手伝うように。」

その後、三上課長・砂田さんは情報部門と連携しシステムを選定、概算費用も確認しました。

並行して、篠原社長にそれとなく話をして良い感触を得た三上課長。
この辺りは三上課長のうまいところです。

波乱の部課長会議

月一度行われる「部課長会議」。
社長以下、すべての部課長以上が集まり行う会議です。
棚札を廃止し、バーコードを使ったシステム管理に移行する件も議題にあがることになりました。

工数削減効果だけでもシステム費用がペイできる内容。
在庫ずれの早期発見もできるとあれば、すんなり通るはずと期待する三上課長。
砂田さん作のレポートをベースに、期待される効果や概算費用を追加した資料を用意し、会議で説明しました。

それを聞いた加賀経理部長(56才)。
「基幹システムと在庫の二重管理になってまずい」
と言い出したのです。

導入反対意見を述べる部長

予想外の意見に内心驚く三上課長。
しかしここは落ち着いて対処します。
「あくまで会社の正となる在庫データは基幹システムです。
ただ基幹システムだけですと現品とズレても分かりません。
そのため、我々で現品ベースの在庫管理も行いデータ照合することになっています。
この仕組みは、あくまで棚札の代わりとお考えください。」

加賀経理部長からこれ以上の意見は出ませんでした。

今度は、井納製造部長(54才)から
「その仕組みで生産計画に基づいた将来の在庫推移や発注計画は作れないのか?」
との質問です。
熊原製造課長(35才)も
「バーコードで工程管理もできると聞いたことがある。できないのか?」
とトリッキーな質問をかぶせてきました。

三上課長は、ここも冷静にさばきます。
「生産計画を絡めた将来の在庫推移等は生産管理システムで行うべきもの。
工程管理の件は、バーコードという入力方法が同じなだけ。
いずれも今回の課題と異なります。」

そして最後に言いました。

「クリアすべき課題をあれこれ増やすと、複雑になり費用も跳ね上がります。
レポートが示す通り、在庫ずれを早期発見できず手間もかかっており、速やかに改善すべきと考えます。
費用も、その観点で標準パッケージ導入を前提に出したものです。」
と今回の課題を改めて示しました。

やり取りを聞いていた篠原社長。
「棚卸で大きな差異が出るようでは安心して経営できない。
その点で在庫の現品管理は重要だ。
手書きだと余計な作業を強いるのも報告書の通りだろう。
テーマを絞り安全に進めるのが現実的じゃないか」
と述べ、方向性が決まりました。

エピローグ

「それは大変でしたね。」
報告を聞いて、思わず口にする砂田さん。
自分だと上手く切り返せる自信はなく、素直に三上課長を尊敬しました。

「今の基幹システムを開発したのが12年前。
その時、各部門から次々と追加要望が出て、大幅な遅れと予算超過となった。
社長は、そのことが頭をよぎったんだろう。」
三上課長も部下の頑張りに応えられてほっとした様子でした。

現在は砂田さんがシステム導入後の作業手順を確認し、新たな業務マニュアルを鋭意作成中です。
そんな様子を見ながら坂口さんも濱口さんも導入を楽しみにしています。

まとめ

如何でしょうか?
三上課長は頑張りましたし、砂田さんも少しずつ頼もしくなりましたね。

立場が違えば、考えていることも違います。
そんな時、課題の数値化がGOALを再確認するツールとなります。
何が課題なのかが明確となり、的確な検討を促すのです。

改善を検討したいなら、まずはじめに
(1)○○というやり方を強いられ
(2)○○という目標に対し
(3)○○※(件/時間/円 etc.)となっている。
※数値
と現状と課題を数値化した上で進めてください。

先ほどの例ですと
(1)棚札で在庫を書きつつ、回収し月次で在庫表を作っており
(2)早期に在庫ずれを気づくという目標に対して
(3)月に1回しかデータ照合できていない
であり、
(1)棚札で在庫を書きつつ、回収し月次で在庫表を作っており
(2)効率的な在庫管理という目標に対して
(3)毎月36時間の工数を要している。
と言えます。

手書きで在庫管理している人が効率化のために最初に実践するべきこと。
それは「現状の課題を数値化すること」です。
砂田さんのレポートを参考に、改善を進めてください!

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