WMS(倉庫管理システム)を導入すると、ロケーション引当やロット引当を行い、出庫する在庫をシステムが決定できるようになります。
しかし、システム引当ができるからといって、全ての現場でそれが最適とは限りません。
実際には、現場の判断を残した方が運用しやすいケースも少なくありません。
本記事では、現場判断型とシステム引当型の違い、それぞれのメリットや課題について解説します。
目次
出庫する在庫は誰が決めるのか?
同じ商品でも複数の在庫が存在する
倉庫内では、同じ商品であっても複数の在庫が存在することがあります。
例えば、
- ロケーションA
- ロケーションB
に分かれて保管されていたり、
- ロット違い
- 入荷日違い
の在庫が存在したりすることがあります。
出荷する商品だけでは作業できない
例えば、
商品A 10個
という出荷指示だけでは、どの在庫を出庫するのかまでは決まりません。
同じ商品でも複数の保管場所やロットが存在するため、
「どの在庫を出庫するのか」
を決める必要があります。
WMS導入時に検討すべきポイント
考え方は大きく二つあります。
- 現場が決める
- システムが決める
重要なのは、どちらが優れているかではなく、自社の現場に合った運用を選ぶことです。
現場判断型とは
現場が出庫する在庫を選択する方式
現場判断型では、
商品A 10個
という指示に対して、作業者が
- ロケーション
- ロット
を判断して出庫します。
どの在庫を出庫するかは、現場の裁量に委ねられます。
出荷検品で出荷指示と照合する
出荷対象の商品はシステムでチェックします。
一方、出庫するロケーションやロットについては現場判断を残します。
つまり、
「何を出荷するか」
はシステムで管理し、
「どの在庫を出庫するか」
は現場が決める運用です。
倉庫の状況によっては合理的な運用
現場判断型というと、
「WMSとして未成熟な運用」
という印象を持たれることがあります。
しかし、必ずしもそうとは限りません。
例えば、
- 倉庫が比較的コンパクト
- ベテラン作業者が多い
- ラックやロケーション管理が未整備
- 在庫精度向上の途中段階
- イレギュラー対応が多い
- 荷姿や保管状況を考慮したい
といった現場では、現場判断型の方が運用しやすいこともあります。
システム引当型とは
WMSが出庫対象在庫を決定する
システム引当型では、
商品A
ロケーションA-01
ロット202501
10個
というように、出庫する在庫までシステムが決定します。
作業者は指示どおりにピッキングする
作業者はシステムの指示に従ってピッキングを行います。
現場判断は最小限となり、作業の標準化を進めやすくなります。
作業の標準化が求められる現場で効果を発揮する
システム引当型は、
- 先入れ先出しを徹底したい
- 多人数で同時作業する
- 作業品質を標準化したい
- ロットトレースを厳密に行いたい
- 作業者によるばらつきを減らしたい
といった現場で効果を発揮します。
物流センターや大規模倉庫で採用されることもありますが、重要なのは企業規模ではなく、現場に求められる管理レベルです。

現場判断型のメリット
現場状況に柔軟に対応できる
現場では、
- 一時移動
- 荷崩れ
- 作業中
など、システムでは把握しきれない状況も発生します。
現場判断型では、その場で柔軟に対応できます。
在庫精度が十分でなくても運用しやすい
帳簿在庫と実在庫が完全に一致していない場合でも、現場で調整しながら運用できます。
在庫精度向上の途中段階でも導入しやすいことは、大きなメリットです。
荷姿や保管状況を考慮できる
ケース在庫とバラ在庫が混在している場合や、一番古い在庫が下積みになっている場合など、現場が判断した方が効率的なケースもあります。
システム構築が比較的シンプル
ロケーション引当やロット引当を前提としないため、データ連携や運用設計も比較的シンプルになります。

現場判断型の課題
作業者によって判断が変わる
担当者によって出庫する在庫が異なる場合があります。
先入れ先出しが徹底しづらい
FIFO管理を厳密に行うことは難しくなります。
作業品質が属人化しやすい
ベテラン作業者の経験や知識に依存しやすくなります。
システム引当型のメリット
作業手順を標準化できる
誰が作業しても同じ手順でピッキングできます。
先入れ先出しを徹底しやすい
ロットや入荷日を考慮した引当が可能になります。
作業者による判断のばらつきが減る
経験による差を小さくできます。
作業実績を詳細に追跡できる
どのロケーション、どのロットから出庫したかを正確に把握できます。
システム引当型の課題
在庫精度が前提になる
帳簿在庫が正しくなければ、正しい引当もできません。
高い在庫精度が求められます。
現場が回らなくなることがある
システムの指示どおりの場所に現物がなければ、作業が停止してしまうこともあります。
運用ルールの整備が必要
ロケーション管理やロット管理、棚卸などのルール整備が欠かせません。

どちらが自社に向いているのか
現場判断型が向いている現場
- 倉庫が比較的コンパクト
- イレギュラー対応が多い
- 荷姿が複雑
- 在庫精度向上の途中段階
- 現場経験者が多い
といった現場です。
システム引当型が向いている現場
- 在庫精度が高い
- 厳密なFIFO(先入れ先出し)運用が必要
- 多人数で作業する
- 作業標準化を進めたい
といった現場です。
段階的な移行も有効
最初から完全なWMS運用を目指す必要はありません。
まずは現場判断型から始め、在庫精度や現場を整備した後に、システム引当型へとシフトしていく方法も有効です。
在庫スイートクラウドで実現できる運用
Lite
出荷実績管理を中心としたシンプルな運用です。
Pro(仮引当)
出荷指示との照合を行いながら、出庫する在庫は現場が判断します。
Pro(本引当)
ロケーション・ロット引当を行い、システム主導でピッキング指示を出すことができます。
まとめ
システム引当は強力な仕組みですが、常に正解とは限りません。
現場判断にも柔軟性という大きなメリットがあります。
重要なのは、
「どちらが優れているか」
ではなく、
「自社の現場に合っているか」
です。
また、最初から完全なWMS化を目指すのではなく、段階的に運用レベルを高めていく方法も有効です。
現場とシステムの役割分担を考えながら、自社に合った最適なバランスを見つけることが、WMS導入成功のポイントといえるでしょう。
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